デューデリジェンスの種類と内容・実施の必要性を解説
2024年01月16日
デューデリジェンス
デューデリジェンスにはさまざまな種類があるのをご存知でしょうか。デューデリジェンスはM&Aで重要なプロセスですが、1つだけ実施すれば良いというわけではありません。
この記事では、デューデリジェンスの種類と内容について広くまとめました。それぞれのデューデリジェンスについて実施の必要性も解説するので参考にしてください。
デューデリジェンスは複数実施する
M&Aのプロセスでは、デューデリジェンスを複数回実施することが一般的です。これは、相手企業の価値を評価し、M&Aの可否を決定し、条件交渉を進めるために不可欠なステップとなります。
ただ、相手企業の価値やリスクの評価軸は多数あります。それぞれの軸の中から、今回のM&Aで必要な種類を選びデューデリジェンスを実施することが大切です。
デューデリジェンスをおこなうには費用も期間もかかるので、実施の必要性を吟味して判断する必要があります。
【種類別】デューデリジェンスの実施内容と必要性
デューデリジェンスの必要性は、種類ごとに検討することが大切です。
主な種類のデューデリジェンスについて実施の内容と必要性を見ていきましょう。
ITデューデリジェンス
ITデューデリジェンスは、情報システムやセキュリティ対策、情報リテラシー教育などについてのIT周りのリスク調査です。
買い手企業と売り手企業のシステムを比較し、M&Aによるコストやリスクを評価します。ITはM&Aによって効率的にシナジー効果を生み出すためのインフラになるので、統合のしやすさが重要な要素です。
情報漏えいなどのリスクもあるため、ITデューデリジェンスによる調査で比較することが重要です。
事業(ビジネス)デューデリジェンス
事業デューデリジェンスは、相手企業の事業内容に関する調査です。市場調査を含んでいて、今後、事業によって価値や利益を生み出せるかどうかを調査します。
自社事業との親和性も考慮して、M&Aによるシナジー効果があることも確認します。事業統合をする上では事業デューデリジェンスは欠かせないプロセスです。
財務デューデリジェンス
財務デューデリジェンスでは、財務面のリスクを調査します。財務諸表に基づいて相手企業の財務状況を把握し、統合後に発生し得るリスクを洗い出します。
具体的には債務状況や不正取引の有無、債権未回収のリスク、時価評価による含み損益などを確認します。財務リスクは詳細な分析が必要なので、専門機関による調査の必要性が高いでしょう。
税務デューデリジェンス
税務デューデリジェンスは、M&A前後の税務に関する調査です。
もし売り手企業が確定申告漏れをしていたり、未納の税金があったりすると追徴課税も課されることになります。M&A後の税務リスクを発生させないためには、税務デューデリジェンスで精査することが重要です。
人事デューデリジェンス
人事デューデリジェンスは、人事にかかわるリスク調査です。
就業規則、労働条件、人事評価制度、組織構造、教育研修などの制度の違いを調べます。残業代の未払いや、労働契約書に合わない業務状況などの問題を調査することも目的です。
人事デューデリジェンスをしないと未払金精算でコストがかかったり、社員のモチベーションの低下や退職を招いたりするリスクがあります。
法務デューデリジェンス
法務デューデリジェンスは、法的な権利関係についてのリスク調査で広い意味では知的財産デューデリジェンスも含みます。
保有している権利は法的に正しく保護されているか、債務について問題がないか、契約は合法的に締結されているか、紛争中の問題はないかといった調査内容です。
訴訟リスクを防ぐ意味でも法務デューデリジェンスは重要です。
環境デューデリジェンス
環境デューデリジェンスは、事業活動による環境リスクの有無を調査することです。
大気汚染や、水質汚濁などのリスクがある場合には是正する必要があります。M&A後に環境汚染をしている事実が発覚すると、顧客から信用を失うリスクあります。
環境対策はコストがかかることが多いので、M&A前に環境デューデリジェンスで明らかにすることが大切です。
不動産デューデリジェンス
不動産デューデリジェンスは、売り手企業の保有している土地や建物などの不動産の調査です。
不動産価格の査定だけでなく、不動産担保の有無、今後の経年劣化による修繕工事の必要性について調べます。生産拠点になる工場などの不動産を譲受するときには、今後の事業にも大きな影響があるので不動産デューデリジェンスを実施することが必要です。
まとめ
M&Aでは、必要な種類のデューデリジェンスを選んで実施することが重要です。
相手企業の持っているリソースやリスクを調査した上で、必要なデューデリジェンスを実行に移しましょう。
事業、財務、税務、ITなどの企業経営に直結するデューデリジェンスはM&Aでは欠かせません。
それぞれの専門機関に依頼し、調査結果を踏まえてM&Aを進めましょう。